6BM8 シングルアンプ製作記 ▲factory top


 

はじめに

真空管 6BM8 だけでなく 6GW8, 6BQ5, 6AR5 などは、 約50年前、中学生の頃よく触っていた真空管です。 友達とそれらの自作アンプを眺めながら、 ビートルズやローリングストーンズを聴いていた時代です。 通電された状態で 6BM8 は触っていられる真空管でした。 他は熱くて触れなかった事を思い出します。

6BM8 は ピュアオーディオ に登場する真空管ではありませんが、 今一度このアンプを作ってみないと先に進めないようなノスタルジーに駆られ ライフオーディオ 用にアンプを作りました。 そもそも、 ライフオーディオで普段聞いているインターネットラジオのオールディーズは、 その時代のアンプで聴きたいですね。

ライフオーディオは、在宅時は基本的に電源が入りっぱなしなので、 これまでは消費電力やデバイスの寿命を気にする必要のない半導体が当たり前でした。 今回そのアンプが真空管になるというのは私にはかなり贅沢なことです。 歳を取り人生の後半を生きているから許されるのでしょうか、、 そんなことはない?(大笑。

 

(左)中学か高校の時に作った 6BM8 アンプが実家でホコリをかぶっていました
(右)その出力トランスU-608と今回使った出力トランスPMF-6WSです、 ほぼ同じコアサイズですね

 

動作点の設計 2022 Nov 22-24

パワーアンプは出力段が主役で電源部はそれを支えるもので、 設計順序としては出力段の動作を決め、 それに合わせて電源を設計するのが順序ですが、 市販の部品を使うとなるとそうも言っていられません。 今回使う予定の電源トランスは電圧が低めで、 電源に合わせて出力段の動作点を探ることにします。 これは逆に(抵抗などによる)電圧降下調整がない分 無駄な熱の出ないクールなアンプになりそうです。

標準のプレート特性からスクリーングリッド電圧200Vで ロードラインを考えます

まず、プレート電圧を200Vに決め、 出力トランスの負荷抵抗直線を、 最大定格をあまり超えないように、 グリッド電圧の直線性(負荷直線との交点の間隔)と振れ幅の良い部分を 探しながら上下移動すると、 グリッドバイアス電圧とブレート電流が決まります。 この2つが決まればカソード抵抗値が決まります。

このプレート電圧とグリッドバイアス電圧の和が、 電源電圧と一致すればこれでおしまいです。 電源電圧が高い場合は、抵抗等で電圧をドロップし、 低い場合は、条件を変え動作点を追い込んでいきます。 本機の場合は、低いことが予想されますが、 実際に電源トランスに電流を流してみないと分からないので、 まずは組んでみます。

※実際に組んだ結果は、電圧はそのままでほぼ問題なく、 うまく出来た電源トランスでした。

回路図

 

最適ロードラインを求めるソフトウェアのアイデア 2022 Nov 28

ロードラインを追い込むと言っても、 真空管の個体やメーカーのバラツキもあり、 そもそも紙に線を引いて決めるレベルの精度ですから、 どこまで追い込めるものか。。 現実問題として、 ロードラインが最適でないと(最大定格オーバーは別として) 良好な動作領域の利用率が下がる、 すなわち低歪率の出力が低下することになります。 これは万人に向けた商品なら致命的ですが、逆に、 趣味のアンプで「自分はいつも中程度までの出力で使う」などと分かっていれば、 少々ズレていても問題にはならないように思います。

本気でロードラインを追い込むなら測定するしかないですね。
PCから以下の項目が自由に制御できれば、 その真空管個体の特性が瞬時に測定できます。
  • -100~0V程度のグリッド電圧(ある意味高圧D/Aコンバーター)
  • 0~400V程度のプレート電圧
  • 0~100mA程度のプレート電流を計測するA/Dコンバーター
計測部分はこんな感じで
for( Eg=0V ; Eg < 100V ; Eg += 1V ) {
    for( Ep=0V ; Ep < 500V ; Ep += 10V ) {
    	 putDACOutput(Eg, Ep);
    	 Ip = getPlateCurrent();
	 plot(Eg, Ep, Ip);
    }
}

この計測したデータから、 バイアス電圧対プレート電圧の直線性の良い部分を自動検出し、 その真空管個体の最適なロードラインを特性曲線上に描画する。 自動的に、それを実現するプレート電圧、カソード抵抗値も示します。 みたいな。。

シャーシ加工 2023 Jan 12

これまで何か作ると、手のマメがつぶれたりで辛い思いをしますが、 今回は無傷で作業を終えました(笑。

いろいろ想像をふくらませレイアウト、 方眼紙上に部品の位置を決めてゆきます
200W x 140D x 50H 板厚1.5 のシャーシ、 方眼紙をテープでとめ、 シャーシパンチを打ちます
シャーシパンチの位置にドリルで穴をあけ、 必要に応じ拡張します、 トランスなどの四角穴はいつも大変です
ブルーの保護シートを剥がし、バリ取りをして、 各部品が取付くか確認します

 

シャーシ塗装 2023 Jan 18-20, 22-24, 26, 30

子供のころ、岡山の実家でシャーシ塗装する時は、 庭に出てスプレーするだけの簡単なものでした。 今はマンション暮らしなので簡単ではありません。 まずは塗装ハウスから作成です。

さて、それまでシャーシと言えば ヘアライン加工かブラック塗装以外に考えたことはありませんでした。 しかし、この方の作品 「本末転倒の真空管アンプ」 を見て目から鱗でした。 なるほど、、こんな感じにも出来るんだ。

そんなわけで塗装の色を考察。 最初たまたまソフト99やホルツなどの車の塗装から調べ始めたので、 車の色がベースで欲しい色がなく途方に暮れていると、 ホビー系のアサヒペンなどだと、色が豊富で欲しい色がありました。 クリエイティブカラー を使うことにしました。 ちなみにカラーサンプルは、 サイトの色見本もPDFの電子カタログもヨドバシのページも全て色が違いますね(苦笑。

シャーシ塗装手順
  • 塗装ハウスを組み立てる
  • 400番の布ペーパーでシャーシ表面を磨く
  • シリコンオフ で脱脂する
  • 裏側を養生テープでマスキングする
  • メタルプライマー (下塗り)塗布1回
  • クリエイティブカラー77番ライトブルー2回塗布
  • 艶だしはクリエイティブカラー92番クリヤ塗布

 

ホームセンターで塗装ハウスの支柱を探す、 屋内配線用のモールが一番安い?、 それを50センチにカットし
養生テープで四隅を張り付け立方体にし、 台所のゴミ袋で覆い、 塗装ハウスの完成(結構時間がかかった)
400番の布ペーパーで表側を磨き、 シリコンオフで表面掃除、 裏側を養生テープでマスキング
メタルプライマー塗布 クリエイティブカラー77番ライトブルー塗布

 

当初の予定ではこれで終わるはずでした、、が

ライトブルーが「日焼けしたトタン屋根の青」に見えてきてしまい。。
もうひと押し何か必要だと考えながら風呂に入っていて多色塗装を思いつきました。

フォトショップでカラーサンプルから色を拾い配色を検討、 ライトブルーを残す部分はテープでマスキング
クリエイティブカラー75番ミントグリーン塗布、 そしてクリエイティブカラー73番ブライトイエロー塗布
さらにアクセントにクリエイティブカラー70番ウルトラマリン塗布、 裏面テープを剥がしようやく完了です

 

今後の参考メモ
  • メタルプライマーは角、辺、底の折り返し部分にもムラなく塗布する
  • 塗装面のマスキングテープは養生テープではなく接着力の弱いテープを使う
  • 薄めにスプレーしないと、タレる、波打つ、でやり直しになる
    近接スプレーすると沸騰し気泡が発生し、やり直しになる
    やり直しは水をつけた1500番耐水ペーパーで指先で狙い滑らかにする
  • 一方で艶を出すためには厚塗りも必要になる
  • 塗装ハウスのビニールにシャーシが接触しないように慎重に
    散布直後は対流で塗料が霧のように漏れ出すので塗装ハウスの口を塞ぐこと

組立てと配線 2023 Jan 30, Feb 3-5

シャーシが小さいこともあってか配線がごっちゃになってしまいました。 配線の構想をしたつもりでしたがあまり出来ていませんでした。

Power MOS FET のレギュレータ基板
配線前のシャーシ内部 レギュレータ基板の取り付け、電源部の配線完了
いろいろ考えたわりにはきれいに配線出来ませんでした (クリックで拡大)
ヤフオクで落札した真空管 6BM8、 一応 未開封 未使用とのことです
ようやく完成です(クリックで拡大)

音質 2023 Feb 6-7

完成したのが夜だったのでその日は大きな音は出せず、 ライフオーディオの小さなスピーカーで、 いつものインターネットラジオを聴き流していましたが、 これまで聴いていたレシーバーの パワーICアンプ と音がずいぶん違う気がしました。 こんなに差があるとは思っていませんでした。

さて翌日、ピュアオーディオの大きなスピーカーで聴いてみました。 音のつぶ立ちや細かさ、空間の広がりがあり、 うるさい音もなく静かで、何より音が心地よく聴いていて楽しい音です。 品が良くスマートに鳴る感じがします。 ただし、ピュアオーディオの 2A3 に切り替えるとその朗々とした鳴りっぷりに、 より安定感と広がりを感じます。 2A3のDFが小さく低音域が厚いせいもあると思いますが。

次にNFを外して聴いてみました。 けして嫌な音にはならないですが、固く平面的で緊張感があり、 2~3曲聴いてすぐにNFなしは止めました。 NFありの方が重心が下がり音が静かで滑らかになる気がします。 ただしピアノやボーカルの厚みは2A3の鳴りっぷりにはかなわないですね。

 

今後の課題

NF量を変えて聴いてみる

大量の負帰還をかけた半導体アンプは別として、 そう言えば、負帰還のかかった久々の真空管アンプなので (2A3は無帰還) 帰還量を変えて音を聴いてみたいです。

三極間接続で聴いてみる

巷で言われる三極管接続で音がどのように変わるか聴いてみたいです。

この辺はいずれ時間を作って、、

東芝 6BM8 動作特性

参考(クリックで拡大)

 

部品リスト 2022 Nov 26-28

主要部品
真空管 6BM8(ヤフオク等で1本1500円程度を想定)
出力トランス PMF-6WS 5K,7K(ゼネラルトランス 旧ノグチトランス)
電源トランス PMC-1890M 180V-0-180V AC90mA(ゼネラルトランス)
アルミシャーシ O-48 200x140x50 板厚:1.5(ゼネラルトランス)

一般部品
9ピン真空管ソケット(千石電商)
RCA入力端子(秋月電子)
SP出力端子(秋月電子)
電源SW(秋月電子) 、他にも検討はしてみた → 白丸SW 自照SW
PLランプ(秋月電子)
ヒューズホルダー(秋月電子)
ヒューズ1A(秋月電子)
メガネACコネクタ(秋月電子)
ACコード(秋月電子)
整流ダイオード1N4007-B(秋月電子)
パワーMOSFET TK3A60DA (2SK3067代替品)(秋月電子)
電源用電解コンデンサ 400V耐圧(秋月電子)
カップリング用フィルムコンデンサ(秋月電子)
オーディオ用電解コンデンサ(秋月電子) 330uF/50V 100uF/25V
抵抗(千石電商) ← ここが種類が豊富か

小物部品
線材(秋月電子)
ゴム足(秋月電子)
ゴムブッシュ(秋月電子)
中型ラグ端子5P(秋月電子)
バナナプラグ(千石電商) 赤色 白色 、スピーカーコード用
結束バンド(近所のホームセンター)
ネジ M3x10mm(近所のホームセンター)ビス ナベ、平ワッシャ、ワッシャ、ナット
黒ネジ M4x10mm(近所のホームセンター)ビス ナベ、平ワッシャ、ワッシャ、ナット